人形劇をよびたい

　夕暮、山の峠で小さな女の子をひろって帰ってきたおおかみのじろきちに、牛のまんさくとっつぁんがいいました。「今くっちまえばほんのひと口だ。三年育てりゃ大きくなって、もっとたらふく食えるぞ・・・・」それからというものじろきちは、大きくなるのが楽しみで、つきっきりで世話をしました。すくすく育ち、やがて赤いほっぺのかわいい女の子。そして三年目・・・

＊＊＊＊「たんと食って大きくなれや」　演出　渡辺真知子＊＊＊＊
　このおはなしは、山また山の山奥の、時折り人の世界の差別やら貧困などのニュースも聞こえてくる、そんな誰も知らないところのおはなしです。
　さて、おおかみのじろきちは乱暴で嫌われ者。じろきちがやって来るとみんな逃げてしまう。そんなじろきちに拾われたちいさな女の子「あや」。一口でぺろりでは少なすぎる。大きく育ててたらふく食おうと張り切るじろきち。”たんと食って大きくなれや”を口癖にじろきちは、慣れない子育てを三年間…。
　いっぱい食べて、たくさん遊んで、ぐっすり眠る。こどものすくすく育ちゆく姿を見ていると、驚きと喜びでうれしくなります。
　こどもたちの巣立ちを心から喜び、彼らが行く未来が格差などない、明るく豊かな世界であると信じたい。
　それは、私たちおとなの大切な役割だと思います。

◆原作／矢玉四郎（岩崎書店刊「じろきちおおかみ」より）
◆脚色／野田牧史
◆演出／渡辺真知子
◆人形美術／佐久間弥生
◆装置／斉藤英一
◆音楽／長沢勝俊
◆音響効果／宮沢 緑

　この作品に出てくる主役たちは、布をたたんだり結んだり、 また身近にある簡単な素材を組み合わまた身近にある簡単な素材 を組み合わせたりして作られた人形たちです。
　一枚のスカーフが、かわいい人形となって踊ったり、 布とスチロール玉で作ったピエロが動物たちを相手にサーカスを くりひろげたり、工夫によって素晴しい人形劇の世界を作りだせることを、 この作品を通して感じていただけることでしょう。

◆作・演出・美術：星野 毅